不動産DX

AI使

物件資料、契約書類、追客。仕事が書類と人に張り付いている不動産会社ほど、AIへの期待は大きくなります。ただ、導入した会社が1〜2ヶ月後につまずく場所はほぼ決まっています。原因と、つまずかないための現実的な順番を解説します。

不動産DX

不動産会社から、AI活用の相談を受けることが増えました。

理由を聞くと、だいたい同じところに行き着きます。物件資料や契約書類などの紙とPDFが多い。仕事のやり方がベテランの頭の中にあって、人が辞めると回らなくなる。反響への追客は手が足りず、気づくと放置になっている。

つまり、仕事が「書類」と「特定の人」に張り付いている。だからこそ、AIで何とかできないかという期待が生まれます。この期待自体は正しいと思います。不動産はAIと相性のいい業界です。

ただ、「まず入れてみた」会社が1〜2ヶ月後につまずく場所は、ほぼ決まっています。

1〜2ヶ月後に起きること

導入直後は盛り上がります。デモを見て「これはすごい」となり、何人かが使い始めます。

ところが1〜2ヶ月すると、こうなります。

  • 使う人が特定の1〜2人に固定され、他の人は元のやり方に戻っている
  • AIに聞いても「うちの物件のこと」は答えられないと分かり、期待が冷める
  • 資料の読み取りを試したが、形式がバラバラで結局手直しが要る

そして「AIはまだ早かったね」という結論になり、月額費用だけが残ります。

私はこの状態を「AIの失敗」だとは思っていません。つまずいた場所は、AIの性能ではないからです。

つまずきの正体は、AIではなく「渡す側」にある

原因はほとんどの場合、AIに渡す情報と業務の側にあります。大きく2つです。

1つ目は、入口がバラバラなこと。

物件資料は仕入れ元ごとに形式が違い、Excelと紙とPDFが混在し、同じ項目でも書き方が担当者ごとに違う。人間はこのバラつきを経験で吸収していますが、AIに任せるなら話は別です。読み取りの精度を上げる工夫よりも、入ってくる書類や情報の形をそろえる方が先で、効果も大きい。これはどの業務でも共通する原則です。

2つ目は、業務の手順が人によって違うこと。

追客ひとつ取っても、いつ・誰に・何を送るかが営業担当ごとに違う会社は多い。手順が決まっていない仕事は、AIに教えようがありません。属人化した仕事をそのままAIに渡そうとすると、「誰のやり方を正とするか」で止まります。

もうひとつ、判断を狂わせるものがあります。体感です

「この作業に業務時間の7〜8割を取られている」という現場の体感を、実際にデータで数えてみたら3%だった、ということが実際にあります。体感で対象を選ぶと、手間をかけて自動化したのに効果がほとんど出ない、という一番もったいない失敗につながります。

順番を変える。棚卸しが先、AIは後

つまずく会社と進む会社の違いは、ツール選びではなく順番です。進む会社は、AIを触る前にこれをやっています。

  1. 業務の棚卸し — 誰が・何に・どれくらい時間を使っているかを一度書き出す。体感ではなく数える
  2. 対象を1つに絞る — 全部やろうとしない。書き出した中から、時間が大きく手順が固まっている業務を1つ選ぶ
  3. 入口をそろえる — その業務に入ってくる書類・情報の形を決める。ここは地味ですが、後の精度を全部決めます
  4. 人の確認を残して小さく回す — 最初から全自動にしない。AIの結果を人が確認する形で始めて、信用できる範囲から広げる

投資判断の物差しもシンプルです。その仕事に今払っている人件費を下回るか。削減できる時間に人件費を掛けた金額と、導入と運用の費用を並べれば、やる価値のある業務とない業務は数字で分かれます。

「AIを入れたい」を「この業務をこう変えたい」に変換する

まとめると、不動産会社のAI活用で最初にやるべきことは、AIの勉強でもツールの比較でもありません。自社の業務を、AIに渡せる形に整えることです。

  • どの業務に、実際どれだけ時間がかかっているか
  • その業務の入口に入ってくる情報は、そろっているか
  • 手順は、人が変わっても同じになるまで決まっているか

この3つが整理できた業務から、AIは驚くほど素直に働きます。逆にここを飛ばすと、どんなに高性能なツールを入れても同じ場所でつまずきます。

ウェイクラップの考え方

ウェイクラップは、不動産業界の基幹システムまわりの業務に6年携わってきた経験をもとに、業務の棚卸しから仕組みの設計・導入・定着までを一貫して伴走しています。

現場の言葉とシステムの言葉の両方が分かるので、「AIを入れたい」という相談を「どの業務を、どう変えるか」まで一緒に落とし込むところから始められます。

「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。まずは自社の業務のどこにAIの入り口があるのか、棚卸しから一緒に整理してみませんか。

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