警備DX

警備業は「この現場に何人出せるか」で仕事が決まる人数の商売です。求人倍率が5倍を超える中、採用だけで戦うのは苦しい。人が集まる会社が実はやっている「紹介の連鎖」と、それを支える「辞めない仕組み」の作り方を解説します。

警備DX

警備会社の社長と話していると、最後は必ず同じ話になります。

「結局、人がいるかどうかなんですよね」

システムの話をしていても、評価制度の話をしていても、行き着くのはここです。最初は私も、もう少し別のところに課題があると思っていました。隊員を正しく評価して、給料や配置を最適化すれば会社は強くなる、と。

ところが、付き合いのある警備会社の社長たちとじっくり話してみると、返ってきた答えははっきりしていました。「適材適所より、まず人数」

この記事では、その言葉の意味と、人数を確保するために本当に効く打ち手について書きます。

警備は「人数を売る」商売

警備の仕事は、多くの場合こう決まります。

「この現場に、何人出せますか。それならいくらです」

つまり、出せる人数がそのまま売上の上限になります。腕のいい隊員が1人いても、現場に3人必要なら3人そろわなければ仕事は取れません。人が足りなければ、せっかくの依頼を断ることになります。

だから警備会社の強さは、設備でも価格でもなく、「何人出せるか」でほぼ決まります。社長たちが「人がいるかどうか」と口をそろえるのは、この構造があるからです。

採用だけで戦うのは、かなり苦しい

では採用を頑張ればいいかというと、数字がそれを許してくれません。

厚生労働省の統計(一般職業紹介状況・令和8年5月分)では、警備員を含む「保安職業従事者」の有効求人倍率は5.64倍。全職業の平均は0.99倍です。仕事を探している人1人に対して、5件以上の求人が奪い合っている状態です。

現場の感覚も同じです。

  • 大手の求人サイトは掲載料が高い
  • 他の業種の求人と並ぶので、警備の求人は埋もれやすい
  • 立ち仕事・暑さ寒さのイメージが先に立ち、応募そのものが少ない

お金をかけて求人を出しても、思うように人が来ない。多くの会社がこの壁に当たっています。

人が集まる会社は「紹介の連鎖」で増えている

一方で、人がそれなりに集まっている会社もあります。話を聞くと、共通点がありました。

入ってくる人の多くが、今いる隊員からの紹介なのです。

夢を追いながら働く人、学生の副業、別の仕事と掛け持ちしている人。そういう人たちが「ここ、働きやすいよ」と仲間を連れてくる。求人広告からの応募より、この紹介のつながりの方がずっと太い、という会社は少なくありません。

ここで大事なのは、紹介は「今いる人が辞めずに、満足して働いている」ときにしか起きないということです。

不満を抱えて辞めていく人は、友人を連れてきません。むしろ「あそこはやめた方がいい」と言われます。逆に、働き続けている人が増えるほど、紹介の入り口も増えていきます。

つまり、辞めない仕組みは、それ自体が一番効く採用策になります。

隊員が辞める理由は、給料だけではない

では、隊員はなぜ辞めるのか。もちろん給料は大きな理由です。ただ、それだけではありません。

警備の現場は、社長や管理者の目が届きにくい仕事です。隊員はそれぞれ別の現場に散らばり、真面目にやっている姿を上の人が直接見る機会はほとんどありません。

すると、こうなります。

  • 頑張っても、それを知っているのは現場の隊長だけ
  • 昇給や評価の判断は、上の人の記憶や印象に頼ることになる
  • 「ちゃんとやっているのに、見てもらえていない」と感じる

この**「見てもらえていない感」**が積み重なると、少し条件のいい話が来たときに、あっさり移ってしまいます。

評価制度を作ろう、という話になることもありますが、分厚い制度を作っても現場で回りません。警備会社に必要なのは、立派な評価表ではなく、現場での頑張りが、記憶ではなく記録として上に届く仕組みです。

小さく始めるなら、「毎日ひとこと」から

おすすめしているのは、とても小さな形から始めることです。

  1. 現場の隊長が、その日の隊員に5段階と一言だけ残す — 「誘導が丁寧だった」「遅刻なし」程度で十分。スマホで1人数秒で終わる量にする
  2. 月末にまとめて見る — 1か月分の記録がたまると、誰がどんな頑張りをしていたかが自然に見えてくる
  3. AIには「たたき台」だけ作らせる — 記録の要約や評価の下書きはAIに任せ、最終的な判断は必ず人が行う
  4. 本人に返す — 「隊長がこう書いていたよ」と一言伝えるだけで、「見てもらえている」という感覚は大きく変わる

ポイントは、最初から完璧な評価制度を目指さないことです。まずは記録が続くかどうかを2週間ほど試してみる。入力が面倒で続かないなら、項目を減らす。続くなら、そこから少しずつ広げる。この順番なら、大きな投資をせずに始められます。

そして、AIに「隊員を査定させる」のではなく、人が判断するための材料集めをAIに手伝わせる。この線引きをはっきりさせておくことが、現場の納得感につながります。

採用に悩んだら、まず「辞めない」から見直す

まとめると、警備会社の人手不足への打ち手は、こう整理できます。

  • 警備の強さは「何人出せるか」で決まる
  • 求人倍率5倍超の中、採用広告だけで戦うのは苦しい
  • 人が集まる会社は、今いる隊員からの紹介で増えている
  • 紹介は、隊員が満足して働き続けているときにしか起きない
  • だから「辞めない仕組み」が、一番効く採用策になる

求人の出し方を変える前に、今いる隊員が「ここで働き続けたい」と思えているかを見直してみる。遠回りに見えて、実はそれが一番の近道です。

ウェイクラップの考え方

ウェイクラップは、中小企業の業務の棚卸しから、仕組みの設計・導入・定着までを一貫して伴走しています。警備業でも、給与計算や現場管理のシステムづくりに関わってきました。

大きなシステムを入れる前に、まず「今いる人が辞めない」「現場の頑張りが上に届く」ための小さな仕組みから一緒に考えます。

「人が足りない」「入ってもすぐ辞めてしまう」という段階からで構いません。自社の現場で何ができるか、まずはお気軽にご相談ください。

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